平成30年11月度勉強会報告

以下のとおり勉強会を開催いたしました。

   

日時:平成30年11月10日(土) 13:30~15:00

会場:広島市総合福祉センター ボランティア研修室

      

ケース①神経症圏の診断名が、審査請求で容認されたケース

ケース②客観的資料で初診日を主張したが、否認されたケース

     

【ケース①の解説】

精神疾患の認定基準には、「診断名が神経症であっても、精神病の病態を呈している場合は障害年金の対象とさなる場もある」という例外規定があります。請求側はこのルールの適用を求め手続を実行しました。会員社会保険労務士は、請求の当初から関与しています。

このケースで当事者は「強迫性人格障害(F6)」と「うつ状態(F4)」と診断されていました。そして通常の審査手続をなぞれば、このふたつの診断名はともに対象外疾病のため、裁定請求では想定どおり不支給とされます。そこで担当の社会保険労務士は、不服申し立て制度により審査のやり直しを求めることにしました。

具体的には、過去の「社会保険審査会裁決」を元に「精神病の病態であること」を主張します。社会保険審査官があらためて医師照会を行ったところ、「うつ状態は症状のひとつであり、総合的な病態は気分変調症(F3)である」との回答があったことから、不支給処分が変更されたものです。

    

【ケース②の解説】

請求当事者は、十代後半の学生時代から体調不良(情緒不安定)を訴え小児科に通院されていました。そしてこの当時「自律神経失調症」とは告げられていましたが、時期があまりにも古く受診状況等証明書の発行を受けることは出来ませんでした。

    

このような場合手続では、その次に受診した医療機関で発行された証明書を請求書に添付することが求められます。しかし、当の内科・神経内科にカルテは残っておらず、通院記録から受診した日付しか辿ることは出来ませんでした。日付がはっきりしていても、診断名や病態が不明であれば、同じ病気が継続しているか否か不明なため、信憑性が高い記録として扱われることは多くありません。

   

当時は、精神疾患や精神科を受診することに対する偏見が今より強い時代背景にありました。このケースでも、本人が受診・治療を強く希望するも、家族の意向でそれが叶わず必要な治療が受けられませんでした。このような事情で病態は不変継続。徐々に通学にも支障が出始めます。

    

聞き取りからこのような経緯・事情を把握した会員社会保険労務士は、通信簿での欠席記録、学校への欠席報告記録、第三者証明、学内カウンセラーの意見書など、「受診事実が存在することを裏付ける証明書」を、時間をかけて丁寧に取得しました。

また当事者が国民年金に強制加入となる20歳以降に受診した医療機関では、受診状況等証明書を取得することができました。そしてこの証明書に(学生時代に受診したことがあったようだ)との記載は受けられました。そして現在の状態を証明する診断書によると、その病態は、日常生活に相当程度の支障が認められるとされました。以上が、手続にあたって揃えた主な事情です。

      

しかし本件は、20歳前に初診日があったとの事実認定を受けることは、できませんでした。関与した社会保険労務士は、再審査請求を提起し不服申し立て制度の最終まで争いましたが、そちらでも認定を受けることはできませんでした。

初診日(とりわけ年月日)、医療機関の発行する書面の存在、その他客観的証明書の信憑性が強く問われる決定でした。

      

          

概要は以上です。

    

定期的に開催していますので、出席ご希望の方はフリーダイヤルあてお問い合わせくださいませ。

  

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