平成31年3月度勉強会報告 【不服申し立てを契機として、本来受給できていたはずの等級が認定された】ケース

以下のとおり勉強会を開催いたしました。

   

日時:平成31年3月24日(日) 13:30~15:00

会場:広島市総合福祉センター

      

【不服申し立てを契機として、本来受給できていたはずの等級が認定された】ケース

 

【事案の概要】

御相談者の状況は、「知的障害」と「先天性心疾患」の併合により障害基礎年金1級の受給者でした。何度目かの更新のとき、心疾患の障害程度が軽くなったという判断により等級が2級に下げられ年金額が減額されたところから会員社会保険労務士が関与しました。

            

診断書や当事者への聞き取りによる実用性把握を行ったところ、心疾患の回復を根拠とした年金額減額は不当と見込まれたため、更新審査のやり直しを求める「不服申し立て手続」を実行しました。また、現在障害年金を受給している方の等級を上げるための手続である「額改定請求」も同時並行で実行しました。ただし額改定請求の対象としたのは、知的障害です。実は当事者のIQは21でした。長年の慣れによって生活実用性が保たれたり向上したりすることはあっても、悪化したり良くなったりすることは医学的に通常起こりません。ではなぜ額改定請求を行った。会員社労士は、「知的障害単独で1級とされて然るべき」と確信めいた思いを持ったからです。

    

そしてこのふたつの手続を実行した結果、後から実行した額改定請求が先に認定され、知的障害単独で一級という認定がなされました。しかもその後国から、「前の更新で等級が下ったという決定を取り消します(なかったことにします)」という通知も届きました。ようは、権利が元通りに回復したということです。

       

これはあくまでも私たちの推測ですが、このような例外的な扱いの理由は次のようなものではないかと考えます。まず、不服申し立て手続の際に行われる「審査官の意見聴取」を受けた保険者が、自らその誤りに気付いた。そして、医学的な考え方(知的障害は原則状態不変であること)と、手続きミス(もともと1級として支給されてもおかしくないケースを2級としていたこと)のバランスを図ろうとした。最終的には、不服申し立て手続きを飛び越えて、知的障害単独での一級を認めた。ーこういうものです。

       

なお、執筆時点において、先に起こした不服申し立て審査結果は正式に通知されておりません。このことから、取り下げも行っていません。

        

このような取り扱いは一般的ではありません。しかし、実務上複雑な解釈を経る過程ではこういうケースも起こりうるのだということをあらためて考えさせられました。このケースをやや難しい言葉でひとまとめに表現しますと、「不服申し立てと額改定請求を実行したことで実質的処分変更を迫った」という見方ができるものでした。

            

以上です。

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勉強会は隔月開催しています。

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